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2022.10.18

コロナ禍で激変?!小売業界の変わらぬ3つの課題と小売店舗が対応すべき3つの変化とは。

いま小売業を直撃する大きな変化と課題、そして求められる対応とは

消費者が店舗に足を運び、並んでいる商品を手に取ってみて、気に入ったら買う。この当たり前だった消費行動は、いま大きな変革を迎えています。そしてこの大きな変革は小売業界全体に多大な影響を与えています。

大量生産と大量消費を背景とした高度経済成長の時代は、モノを作れば売れていきました。所得が右肩上がりの中では、モノを買って所有すること=豊かな生活というイメージが浸透していたからです。

しかし全世界的に循環型社会へのシフトを迫られることになったいま、新たな消費のあり方を考えるようになっています。また消費者個人に目を向けると「若者の〇〇離れ」という言葉が示すように、モノを所有するよりも利用する傾向が強くなりました。
様々な要因を背景にした、この「店舗でモノが売れない」時代を、小売業界、特に店舗の運営はどのようにあるべきなのでしょうか。

小売店舗の生き残りには、リアル店舗ならではの強みを発揮し、リアル店舗でしか得られない顧客体験を提供することが大切です。そのためには、小売店舗の業務効率化に取り組み、店長やマネージャーがスタッフの教育・指導といった本来の管理業務に集中できる体制を築く必要があります。この記事では、小売業界が慢性的に抱える課題と、店舗スタッフが対応すべきコロナ禍での小売店舗の変化についてわかりやすく解説します。
まずは、小売業界全体の課題感を押さえていきましょう。

小売業界全体の”変わらぬ3つの課題”とは?

小売業は古くから労働集約型で生産性の低い業界と言われてきました。それゆえにパート・アルバイトや正社員が集まりづらく、慢性的な人手不足という課題を抱えています。
そんな中で、新型コロナウイルス感染症の予防対策などが積み重なり、世の中の働き方改革の潮流に逆行するかのように、現場にいる店舗スタッフの業務負担はますます増加してきているのが現実です。

店舗間の連絡・指示といった手間のかかる間接的な業務に時間をとられる一方で、消費者の購買行動の変化によるECサイトでの購買も増加し、リアル店舗にとって大きな向かい風となっています。

課題Ⅰ:人材が集まらず慢性的な人手不足に悩む業界

日本は少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、業界問わず社会全体として人材不足に悩まされています。中でも小売業界の人手不足は深刻だといわれています。そのため、営業時間を縮小して、提供するサービスを少なくするといった対策をする企業も出てきました。

人材の確保は企業にとって非常に重要です。どんなに素晴らしい商品、サービスを扱っている会社であっても、人がいないことにはそれを消費者に届けることができません。小売店舗だと、スタッフの数が足りなければお客様を待たせることにもなり、サービス品質の低下にもつながります。

人材不足は売上の低下に直結し、お店の評判すら下げてしまう恐れがあります。そのため、人事は人材を採用するだけでなく、質の高い人材の確保や育成に力を入れなくてはなりません。

課題Ⅱ:離職率の高さ

「せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまう」というのはどの小売店舗にとっても共通する悩みの一つでしょう。店舗としては、採用するのに時間やコストもかけている上に、その後の教育や管理にも多大な時間的・資金的コストをかけているはずです。すぐに辞められてしまうのは大きな課題と言えます。しかし、そんな小売店舗の思いとは裏腹に、短期間ですぐ職場を離れ、離職してしまうケースは少なくありません。

採用した人材がすぐに辞めてしまうと、それまでに費やしたコストや時間がすべてムダになってしまいます。またすぐに新たな人材を探す必要があり、しかもまた同じように教育をしなくてはなりません。企業の人事はもちろんですが、特に店舗を管理する側の人間としても非常に頭を悩ませる課題の1つなのではないでしょうか。

課題Ⅲ:属人的な店舗体制と業務量の多さ

では、小売業界が不人気業界であり、離職率が高い原因はなんでしょうか?
それは小売店舗ならではの「属人的な店舗体制」と「業務量の多さ」 にあります。
冒頭でお伝えしたように小売業は労働集約型の業界であり、パートやアルバイトなど非正規社員の比率が高い業界でもあります。そのため、小売業界はかねてより非正規労働者への依存が強い業界なのです。

しかし、小売業の店舗においては、体系だったマニュアルが整備されていないケースや整備されていたとしてもそれが活用されずに、実際は業務の大半が社員である店舗スタッフの経験と感覚に依存するものになってしまっているケースが多く見られます。それゆえに、新たに入ってきた店舗スタッフへの教育は「見て、真似て学ぶ」というOJTの要素が強く、なかなか店舗スタッフの業務スキルの底上げに繋がらないのです。

そんな属人的な教育体制であるがゆえに、常に業務量の多い小売店舗においては、繁忙期を迎えると教育に時間を割くことができず、店舗スタッフの業務理解度・スキルは一向に上がらず、ただ「業務量が多い」という苦しさだけが残り、離職に繋がってしまうのです。

つまり、新たな店舗スタッフ向けの教育体制を築かなければ、この負の連鎖から抜け出すことは非常に困難だということがお分かりいただけるのではないでしょうか?

コロナ禍の小売店舗が”対応すべき3つ変化”とは?

ここまで小売業界全体の以前からの課題感について解説してきました。
そんな小売業は、数ある業種の中でもコロナによって、様々な側面において大きな変化が起こった業種のうちの1つです。
当然、小売業界の変化はその現場である小売店舗にも大きく影響します。ここからは、そんなコロナ禍での変化とそれに伴う店舗スタッフ業務への影響について解説いたします。

・変化Ⅰ:流動人口の変化に伴う商圏の変化
・変化Ⅱ:消費者行動変化とECの伸長
・変化Ⅲ:セルフの売場づくり

変化Ⅰ:流動人口の変化に伴う商圏・客層の変化=新たな店舗顧客への対応

まず最も大きな変化として小商圏化とワンストッピングショッピング需要が挙げられます。
コロナ禍での幾度の緊急事態宣言や自主的な染予防対策の意識、リモートワークの普及などによりステイホームの時間が増えたことで消費者の行動範囲は狭まり、休日に遠出しての買い物や買い回りの購買行動は大きく減少しました。

このようにコロナ禍では「近い場所で、必要最低限な商品を買いそろえる」という消費者行動に変化をしました。このような変化は都心立地の百貨店やコンビニエンスストアなどにとっては強い向かい風となる一方で、最寄り品を扱いワンストップショッピングを実現可能なGMS(総合スーパー)や食品スーパー、ドラッグストアにとっては追い風となっていくでしょう。

業態によって影響の良し悪しはあるものの、いずれの業態においても小売企業の視点から見ると、今まで以上に「店舗の近くの足元商圏のお客様を着実に取り込めるか」が重要なポイントになってきます。

そういった意味で、店舗スタッフはコロナ禍での新たな足元商圏客層への販促や接客などに対応していかなければいけません。

変化Ⅱ:EC・通販の伸長=店舗での新たな顧客体験価値の創造

続いての変化はEC・通販の伸長が挙げられます。

ここまでコロナ禍での商圏の変化として、外出自粛やリモートワークの普及から近場にて買い物を済ませるという消費者行動に変容していることを解説いたしました。さらなる消費者行動の変化としては、これまで対面の店舗での購買が主であった購買がEC・通販などの非対面型の購買へと大きく変容したことにあります。

日本通信販売協会の調査によると2020年のEC業界(BtoC分野の物販系EC)の市場規模は前年比+120%で初の10兆円に到達しました。同調査の消費者アンケートによると「コロナ前後のEC・ネット通販の利用頻度は増えたか?」という質問に対して約7割の人が「増えた」「もしくは今後増えると思う」という回答をしていることからも、コロナ禍でECでの消費行動が増加したことが伺えます。

このようなEC市場の伸長は決して一時的な需要の高まりではなく、日常の消費者行動が根本的に変容したためと言えるでしょう。コロナ前からデジタル媒体の進化と共にECは人々の生活に広がってきてきましたが、コロナ禍で非接触・非対面が消費行動の選択肢の1つとなったことで、オンラインでの購買行動は消費者の生活に定着したと考えられます。

そのため、今後の小売店舗においては、いかにネットとリアル店舗の融合を図り、店舗ならではの顧客体験価値を提供していくことができるか、を考えていかなければいけません。店舗スタッフは従来の接客だけでなく、お客様の店舗での購買をより意義のある楽しいものにする工夫が求められるのです。

変化Ⅲ:セルフの店舗づくり=店舗の新しい仕組みづくり

コロナの影響はこのようなオンラインでの変化のみならず「店舗のあり方」にも大きな影響を与えました。コロナ禍のリアル店舗では、感染拡大防止で三密を避けるべく「非接触」の店舗づくりが急速に進んでいます。人と人との接触をできる限り減らし、お客様が店員と関わらずにセルフで買い物をできる売場をつくっていくことが感染予防はもちろんのこと、最大の課題でもある業務の効率化・生産性の向上においても重要項目となるのです。

このような「店舗の非接触」に目を向けると、店内の混雑予防策として、予約システムの導入や混雑状況の可視化といった工夫も見られます。百貨店やショッピングセンターではお正月恒例の福袋をネット予約制にし、専門小売店舗では来店自体を完全予約制にする店舗もでてきました。非接触な買物の手段としてはキャッシュレス決済があげられます。経済産業省のキャッシュレス・ポイント還元事業により店舗のキャッシュレス導入は進みましたが、「非接触」という新たなニーズが追い風となりました。

セルフ化された小売店舗においては、店舗スタッフの接客の工数が減る一方で、新たなシステムへの対応やお客様への説明、新しい売り場づくりへの対応など、店舗の新しい仕組みを創り上げていくような業務が多く求められるようになってきています。

まとめ

このように小売店舗運営においては、古くから変わらぬ慢性的な課題とコロナ禍で必要になった新たな対応が混在しています。

時代の流れと顧客の変化は待ってはくれません。

変化のスピードが早く、混迷を極めるこの時代だからこそ、改めて小売店舗においては店舗スタッフの教育という基礎から強い地盤を形成していくことが求められているのではないでしょうか。

次回のコラムでは、そんな小売業における「店舗スタッフの教育・管理」に焦点をあてて、具体的な課題とその解決策について解説いたしますので、是非ご覧ください。